1925年秋、ダリがバルセロナのダルマウ画廊で初の個展を開いたときの出品作の一つ。当時、ダリは21歳、マドリードの王立美術学校の画学生だった。地中海に臨むホテルのバルコンだろうか。影法師風な水兵に抱かれて、ヴィーナスがギリシャ彫刻のような風貌で佇んでいる。港、船、雲、そしてヴィーナスと水兵の描写に、形而上絵画、未来派、キュビスム(立体派)などの影響がみられる。超現実主義(シュルレアリスム)以前のダリの青春の記念碑的な作品として興味深い。

© Salvador Dalí, Fundació Gala-Salvador Dalí, JASPAR Tokyo, 2023       G3386